不動産投資 書籍① #22

物件の管理会社について考える。

物件の管理会社(プロパティマネジメント)の選定は、不動産投資において「融資を引き出すこと」と同じくらい重要なファクターです。どれだけ良い物件を安く買っても、管理会社が無能であれば空室が続き、あなたのキャッシュフローは崩壊します。

以下に挙げる2つの論点について、実務的な視点から深掘りしていきましょう。


その①:管理会社を変える(引き継ぐ)かどうかの判断基準

物件を購入する際、基本的には「前のオーナーが使っていた管理会社」をそのまま引き継ぐか、別の会社に変えるかの選択を迫られます。

1. 現状の入居率が「適正」かを見極める

現在の入居率が、立地や設備、家賃設定に対して妥当かを客観的に評価します。

  • 家主の努力不足で空室な場合(管理会社変更を検討): 「募集条件がネット(SUUMO等)に載っていない」「共用部がゴミだらけ」「リフォームが昭和のまま」といった理由であれば、管理会社が無気力な証拠です。
  • 立地や設備自体が限界な場合(管理会社を信頼): もし前の管理会社が「このエリアでこの家賃は高いので、無料Wi-Fiを導入するか、3,000円下げましょう」と前オーナーに提案していたにもかかわらず、前オーナーが拒否していたケースもあります。この場合は、管理会社を変えずに「新オーナーであるあなたが彼らの提案を受け入れる」ことで、一気に入居率が改善します。

2. 「地元の管理会社」が良いのか?

結論から言うと、地方や特定の地域では、地元の管理会社(ローカル業者)が圧倒的に強いです。

  • 理由: 地方の賃貸市場は、横のつながり(地元の仲介業者との関係性)で動いています。「あそこの管理会社の物件は、AD(広告料)をしっかりくれるし、対応が早いから優先して客を紹介しよう」という地元のリアルな人間関係が、入居率90%を維持する鍵になります。

その②:管理会社の選び方

管理会社には、「得意・不得意」がはっきりと存在します。

1. 管理会社の「得意な領域」を見極める

  • 単身者向けアパートが得意: ネット集客や、地元の大学・大手工場(Miuraのような製造業の拠点など)の法人契約ルートを持っている。
  • ファミリー向けが得意: 地元の小中学校の学区情報に詳しく、地域のママコミュニティや店舗へのチラシ配りなどが強い。
  • 築古物件が得意: 自社にリフォーム部門や安い職人を抱えており、コストを抑えたバリューアップ提案ができる。

2. 面談や電話でぶつけるべき「リアルな質問」

管理会社の担当者に「前向きな提案をしてくれる優秀なパートナーか」をテストするため、以下の質問をしてみてください。

💡 質問リスト

  1. 「御社が現在管理されている物件で、今回の物件(アパート)と同じような価格帯・築年数のものの『平均入居率』はどのくらいですか?」 (※85%〜90%以上を維持している会社が合格ラインです)
  2. 「仮に私がこの物件を購入して御社に管理をお任せする場合、今の空室を埋めるために『まず最初に手を付けるべき改善策』は何だと考えますか?」 (※ここで「家賃を下げる」しか言わない会社はNGです。「無料Wi-Fiの導入」「初期費用ゼロプランの提案」「壁紙のアクセントクロス化」など、具体的なバリューアップ案を即座に出してくれる担当者は『当たり』です)
  3. 「このエリアの主な客層(単身赴任の会社員、学生、地元の工場勤務など)と、彼らが部屋を選ぶときに外さない設備トップ3を教えていただけますか?」

その③.「管理費(管理手数料)」の相場と交渉

管理費は、毎月のキャッシュフロー(手残り)から確実に引かれる固定費です。

  • 相場: 家賃総額の「3%〜5%(+消費税)」が一般的です。
  • ぶつける質問:「こちらの物件の管理手数料は、家賃総額の何パーセントになりますでしょうか?また、その費用の中に『一通りの巡回清掃』や『入居者からの24時間クレーム対応』は含まれていますか?」
  • チェックポイント: 安さだけで選ぶと、クレーム対応や清掃が別料金(オプション)になっていて、結局高くつくケースがあります。あなたが20年返済・5棟拡大を目指すなら、「手離れが良く、コミコミで4〜5%」の会社が最も安定します。

その④. 「大家主導でのリフォーム」が可能かどうか(超重要)

多くの管理会社は、自社リフォーム部門の「中間マージン」で儲けています。そのため、大家が自分で安い職人(ジモティーやネットで見つけた業者)を手配することを嫌がる会社が少なくありません。

  • ぶつける質問:「私はDIYや、自分でコストを抑えてリフォーム業者を手配すること(自主発注)にも挑戦したいと考えているのですが、**『原状回復やリフォームを大家指定の業者で行うこと』**は可能でしょうか?」
  • チェックポイント:
    • NGな回答: 「原則、当社の指定業者を使っていただくルールになっています」 👉 この会社はマージンが高く、あなたの利回りを圧迫するので避けた方が賢明です。
    • OKな回答: 「事前に相談いただければ大丈夫ですよ。ただし、退去立ち会い後の見積もりだけは当社で出させてください」 👉 大家のコスト削減への熱意を理解してくれる、柔軟な会社です。

その⑤. 公庫へのアピールにも繋がる

公庫の初回相談の際、事業計画書に「購入後は、エリア内での平均入居率〇%を誇る〇〇不動産に管理を委託し、募集窓口を広げることで90%の稼働率を維持します」と書くだけで、「この融資計画は絵に描いた餅ではない」と銀行側に強力にアピールできます。

ヒアリングで良い担当者に出会えれば、それはあなたの不動産事業の「右腕」を手に入れたも同然です。まずはラフに、彼らの「エリアの生の声」を吸収してきてください。